興信所と探偵事務所の違い

探偵

「興信所」と「探偵事務所」は、どちらも依頼に基づいて調査を行う民間の調査機関ですが、現代においては法的な定義や業務内容に大きな違いはほとんどありません。しかし、その歴史的な背景と得意とする分野には違いがあり、その名残が現在も残っている場合があります。

1. 歴史的なルーツと得意分野の違い

かつては、興信所と探偵事務所の間に明確な違いがありました。

興信所(旧来)

主な業務:企業の信用調査、 身元調査、結婚調査など、経済的・信用情報の収集。
調査方法:内観型調査(対象者に身分を明かして聞き込みや取材を行うのが中心)。
設立背景:銀行などの協力により、主に経済・信用調査を目的として設立された。

探偵事務所(旧来)

主な業務:個人の素行調査、 浮気調査、行方不明者の捜索など、行動調査。
調査方法:外観型調査(対象者に気づかれないように尾行、張り込みを行うのが中心)。
設立背景:個人的な問題解決や事件の調査を目的として設立・発展した。

【現在の実態】 時代の変化とともに、興信所も個人の浮気調査などを手掛けるようになり、逆に探偵事務所も企業調査を行うようになったため、両者の業務領域はほぼ融合しました。 現在、「興信所」と名乗っていても、浮気調査のような個人向けの行動調査がメインの事業であるケースも少なくありません。

2. 法律上の位置づけ(実質的な同一性)

2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」が施行されて以降、興信所と探偵事務所は、法的に**「探偵業」**として同一に扱われることになりました。

届出の義務: 興信所であっても探偵事務所であっても、公安委員会に「探偵業の届出」を行うことが義務付けられています(探偵業法第4条)。

規制の適用: 調査方法や報告義務、秘密保持義務、違法な調査の禁止(盗聴・盗撮など)といった探偵業法上の規制は、興信所と探偵事務所の双方に等しく適用されます。

調査の限界: 法に反する別れさせ工作や復讐代行、違法な手段での情報収集は、どちらの名称を掲げていても行うことはできません。

3. 依頼先を選ぶ際のポイント

現代において、興信所と探偵事務所の名称の違いは、その業者の「歴史的なルーツ」を示す名残に過ぎないことがほとんどです。

浮気調査のような個人の行動調査を依頼する場合、名称にこだわるよりも、以下の点を重視して選ぶことが重要です。

・公安委員会への届出の有無(法律遵守)
・浮気調査の実績と得意とする分野
・料金体系の明瞭さ
・契約前の重要事項の説明の徹底
・裁判で有効な報告書を作成できるか

結論として、どちらに依頼しても、探偵業法に基づき、尾行・張り込みによる証拠収集を行うという業務内容に実質的な差はありません。